作戦会議のホンネ
「金で釣る」から失敗する。リファラル採用で紹介ゼロの会社が直視すべき”不都合な真実”
「よし、紹介してくれたら30万円出すぞ!みんな頼むな!」
朝礼で高らかに宣言した翌日、チャットツールに流れる気まずい沈黙……。
この光景、身に覚えがありませんか?
「うちの社員は愛社精神がないのか?」「やっぱり50万じゃないと動かないのか?」
いいえ、違います。断言しますが、金額の問題ではありません。
これまで数多くの組織課題に伴走し、泥臭く現場を見てきた私だからこそ言えることがあります。
リファラル採用が回らないのは、組織のどこかが不調を訴えているサイン、つまり「組織の健康診断」で異常値が出ている状態なのです。
この記事では、きれいごとは抜きにして、なぜ社員が動かないのかという「不都合な真実」と、明日から組織を健康にし、自然と仲間が集まる状態を作るための「具体的な処方箋」をお渡しします。
誰もが晴れやかな表情で働ける組織を作るため、検討していきましょう。
なぜ、報奨金を上げても紹介は1件も増えないのか?
結論から言います。社員にとって、中途半端な気持ちで友人を会社に紹介することは「人生のリスク」だからです。
経営者や人事の方が思っている以上に、社員はシビアに会社を見ています。
「紹介する人がいない」は社員の優しい嘘
「周りに転職しそうな友達がいなくて…」
もし社員からこう言われたら、それは高い確率で「優しい嘘」です。
本音は「友達はいるけれど、この会社に呼んで、もし彼が不幸になったら責任が取れない」です。
社員が動かないのは、制度が悪いからでも、お金が足りないからでもありません。「大切な友人を不幸にするかもしれない」という不信感が根底にあるからです。
リファラル制度が機能しない本当の原因は「制度」ではなく「不信」
社員にとって、友人の紹介は「人生のリスク」である
もう少し深く、社員の心理に潜ってみましょう。ここを理解しないまま施策を打っても、全て空振りにおわります。
友人に勧められない会社を紹介するのは「社会的信用」の切り売り
私たちにとって、友人はかけがえのない財産です。
もし、紹介した会社がブラック企業だったり、約束されたキャリアが得られなかったりしたらどうでしょう?
「お前のせいで人生狂ったよ」
そう言われた瞬間、友情は終わります。
社員にとってリファラルとは、自分の「社会的信用(クレジット)」を担保におこなう、極めてリスクの高い行為なのです。
「この会社なら胸を張れる」と思えるまで、社員は絶対に動かない
社員が「うちの会社、マジで最高だから来てみなよ!」と、酒の席で本音で語れる状態になっているか。
まずはそこがスタートラインです。
成功への第一歩は、自社の「リアルな姿」を客観視すること
では、どうすれば「紹介したくなる会社」になれるのでしょうか?
まずは、経営者の「思い込み」を捨て、裸の王様から脱却することから始めましょう。
SWOT分析で「魅力」だけでなく「不満・不信」も洗い出す
「うちはアットホームが売りだ」と思っていても、現場は「ぬるま湯で成長できない」と感じているかもしれません。このズレが致命傷になります。
私がおすすめするのは、現場社員を巻き込んだSWOT分析ワークショップです。
強み(Strengths): 他社に勝てる本当の魅力は?
弱み(Weaknesses): ぶっちゃけ、ここがダメだよねという点は?
機会(Opportunities): どんな人が来れば会社は伸びる?
脅威(Threats): 競合に負けている条件は?
ここで重要なのは、「弱み(不満)」からも逃げないこと。「教育体制が整っていない」という弱みが出たら、「だからこそ、自分で道を切り拓きたい人には最高の環境だ」と、ポジティブな魅力に変換(リフレーミング)できないか議論します。
自分たちでは気づけない?「口コミサイト」から本当の評価を拾い上げる
「紹介したくなる」情報を整備し、心理的ハードルを下げる
精神論だけでは人は動きません。
社員が動きやすくするための「武器(語れるネタ)」と「防具(守れる仕組み)」を会社が用意する必要があります。
「良い会社だよ」だけでは伝わらない。リファラル用LPとインタビュー記事で解像度を上げる
「うちの会社いいよ!」だけでは、友人は転職に踏み切れません。
かといって、社員に自社の給与制度や詳細な事業戦略をイチから説明させるのは酷です。これが「面倒くさい」の正体です。
だからこそ、社員に代わって魅力を語る「武器」を持たせてあげてください。
⚫︎リファラル専用LP(ランディングページ): スマホでパッと見せられる、魅力が詰まったページ
⚫︎社員インタビュー記事: 「どんな人が働いているか」が伝わるリアルな記事
⚫︎具体的な求人票: 必須スキルだけでなく、得られるキャリアや年収例を明記
「これ読んでみて!興味あったら繋ぐよ」と言えるだけで、紹介のハードルは劇的に下がります。
友人を守るための「責任の分離」。選考プロセスと紹介者を切り離す設計
そして最も重要なのが「防具」です。
「紹介して落ちたら気まずい」というリスクを、制度で解消します。
「紹介してくれた時点であなたの役割は完了。合否の判断は100%会社が責任を持つし、もし不採用でもあなたの顔が立つように丁寧にフィードバックする」
こう宣言してください。
紹介者を「選考官」にするのではなく、あくまで「きっかけ作り」に徹してもらう。
この心理的安全性が担保されて初めて、社員は安心して友人に声をかけられます。
リファラル採用は、最強の「組織の健康診断」である
リファラル採用がうまくいかない時、それは採用チームの責任ではありません。
「社員が友人を呼びたくない組織」になってしまっている、経営全体の責任です。
制度ではなく「エンゲージメント」が先。自然と仲間が集まる仕組みへ
リファラル採用は、小手先のテクニックでハックするものではありません。
社員一人ひとりが「この会社で働けてよかった」「もっといい仲間を増やしたい」と心から思える状態を作る。
そうすれば、高額なインセンティブなんてなくても、自然と紹介は生まれます。
リファラル数=社員のエンゲージメント指数なのです。
最高の採用施策を、会社の体質改善につなげよう
リファラル採用に取り組むということは、自社の魅力も、課題も、社員の不満も全てさらけ出し、より良い組織へと進化させるプロセスそのものです。
それは痛みを伴うかもしれません。でも、そこから逃げずに向き合った組織だけが、「類は友を呼ぶ」最強の採用力を手に入れられるのです。
さあ、まずは制度をいじる手を止めて、隣にいる社員の声を聞くところから始めませんか?
まとめ
リファラル採用の成否は、制度設計の前に「組織の健康状態」で決まります。
今日からできる具体的なアクションは以下の3つです。
1.「なぜ紹介が生まれないのか?」のアンケートを実施し、社員の”本音の不満”を吸い上げる
2. SWOT分析ワークショップを開催し、現場社員と「自社のリアルな魅力」を言語化する
3.「紹介者は選考に関与しない(責任を負わない)」というルールを明文化し、周知する
採用は、経営そのものです。
もし、「どこから手をつければいいか分からない」「客観的に自社を見てほしい」という場合は、いつでも壁打ち相手になります。
ぜひ一緒に、誰もが晴れやかに働ける、最高のチームを作っていきましょう!しゃかりきに走り抜けますよ!
この記事を読んだ方への次の一歩(CTA)
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