作戦会議のホンネ

中小企業の採用ブランディング入門

「一生懸命に採用活動をしているのに、なぜか欲しい人材からの応募が来ない」

「やっとの思いで内定を出しても、辞退されてしまう…」

「ウチには、大手のような知名度も待遇も無いから仕方ない」

経営者や人事の皆さんとお話ししていると、こんな切実な悩みを毎日のように伺います。

もし、あなたが今、「ウチの会社には魅力がない」と思い込んでいるとしたら、それは大きな誤解です。魅力がないのではなく、“魅力の伝え方”を知らないだけかもしれません。

この記事では、多くの企業の採用に伴走してきた私たちが確信している、中小企業こそ実践すべき「戦略的な魅力の伝え方」を徹底解説します。

読み終える頃には、あなたの会社だけが持つ“武器”が明確になり、「条件」ではなく「共感」で、未来の仲間から選ばれる会社になるための具体的な一歩が踏み出せます。

【読者への問い】その求人票、「仕事内容」と「条件(Privilege)」だけで勝負していませんか?

まず、胸に手を当てて考えてみてください。

あなたの会社の求人票や採用サイトで、一番目立つ場所に何が書かれていますか?
「月給〇〇万円以上」「年間休日125日」「フレックスタイム制」…

もちろん、これらは生活の土台として非常に大切です。
しかし、もしかして、伝えるべき魅力が「条件面」だけになっていませんか?

かつての私も、事業会社の人事として「どうすれば応募が来るか」と悩み、待遇面ばかりをアピールしていた苦い経験があります。でも、結果は芳しくありませんでした。

なぜなら、特に優秀で意欲の高い候補者ほど、「条件“だけ”」では動かないからです。

 

魅力の正体:候補者が本当に見ている4つのP(Purpose, Profession, People, Privilege)

私たちは、候補者が会社を選ぶ上で本当に見ている魅力を、マーケティングの「4P」になぞらえ、「採用ブランディングの4P」と呼んでいます。

 

1. Purpose(目標の魅力):会社の存在意義、ビジョン。「なぜ、この事業をやっているのか?」という“志”。

2. Profession(活動の魅力):仕事そのものの面白さ、裁量権。「この仕事で、どう成長できるか?」という“実感”。

3. People(構成員の魅力):経営者や働く仲間の魅力、社風。「誰と、どんな雰囲気で働くか?」という“環境”。

4. Privilege(特権の魅力):待遇、福利厚生、働きやすさ。「ここで働くことで何が得られるか?」という“報酬”

多くの会社がアピールしがちな「条件」は、4つ目の「Privilege」に過ぎません

なぜ「欲しい人材」ほど、この「4P」の“共感”を求めるのか 

考えてみれば当然で、候補者は自分の人生の大切な時間を投資する先を選んでいます。
単なる「労働力の切り売り」ではなく、「この会社で働く“意味”」を求めているのです。

「どうせ働くなら、社長の熱いPurpose(志)に共感したい」
「給料が多少高くても、つまらないProfession(仕事)は嫌だ」
「尊敬できるPeople(仲間)と、晴れやかな表情で働きたい」

中小企業が大手に「Privilege(待遇)」だけで勝負を挑むのは、正直、分が悪すぎます。
しかし、残りの3つの「P」こそ、中小企業の“最強の武器”になるのです。

 

「ウチにも4Pはあるはず。でも、伝わらない…」
その原因は、大きく3つ考えられます。

母集団形成の罠:「情報(スペック)」はあっても「物語(エモーション)」がない

求人票に書かれた「業務内容:〇〇のデータ入力」という“情報(スペック)”だけを見て、心が躍る候補者がいるでしょうか? 
元芸人の経験からも痛感しますが、人を動かすのは理屈(スペック)ではなく、感情(エモーション)です。
その仕事が、お客様のどんな笑顔に繋がるのか(Purpose)。その仕事を通じて、どんな困難を乗り越え、どんな成長が待っているのか(Profession)
あなたの会社が持つ「4P」を、候補者の心が動く「物語」として語れていない。それが空振りの一つ目の原因です。

採用ミスマッチの正体:会社が伝えたい「P」と、候補者が求める「P」のズレ

二つ目の原因は、致命的な「ズレ」です。

 

会社がアピール: 「ウチは待遇(Privilege)が良い!」「仕事内容(Profession)が安定している!」
候補者が知りたい: 「でも、社長の想い(Purpose)は?」「どんな人たち(People)と働くの?」

このように、会社が伝えたい「P」と、候補者が本当に知りたい「P」がズレていると、せっかく応募があっても面接で「何か違う…」となり、内定辞退や早期離職(=不幸なミスマッチ)に繋がってしまいます。

ターゲット不在の採用活動: “誰にでも”響くPRは、“誰にも”響かない

「経験者募集!」「明るく元気な方!」
…これ、どこの会社のことだか分かりますか?
採用とは、事業を伸ばすための経営戦略です。
「誰でもいい」はずがありません。「“こんな人”に来てほしい」という明確な人物像(ペルソナ)が決まっていない採用活動は、霧の中で大声を出しているのと同じ。

「誰にでも」響くように薄めたメッセージは、結局、本当に来てほしい「“たった一人”」にも届かないのです。

 

 

では、どうすれば「4P」を正しく、戦略的に伝えられるのか。
私たちは、採用活動を「経営と連動したHR戦略」と捉え、3つの法則で実行していきます。

法則1:【採用マーケティング】「誰に」来て欲しいのか? “たった一人”のペルソナに刺さる「4Pの“訴求軸”」を決める

まずやるべきは、「誰に」採用メッセージを届けるか(ペルソナ設定)です。
そして、そのペルソナが、自社の「4P」のどこに一番魅力を感じるかを分析し、「訴求軸」を決定します。

例1)成長意欲の高い若手向け:
→ Profession(裁量権・成長)とPurpose(事業の将来性)を強く打ち出す。

例2)安定志向の経験者向け:
→ Privilege(働きやすさ)とPeople(温和な社風)をアピールする。

採用はマーケティングです。「誰に」「どのPで」勝負するか。この“選択と集中”こそが戦略です。

 

 法則2:【採用ブランディング】他社ではなく「あなたの会社」が選ばれる“感情的な理由(4P)”を言語化する

訴求軸が決まったら、それを「選ばれる理由」にまで昇華させます。
採用ブランディングとは、「〇〇社といえば△△(という魅力)」と、候補者の心の中に“感情的な旗”を立てる活動です。
「給料(Privilege)は平均的かもしれない。でも、日本一アツい社長(People)と、社会課題を解決する(Purpose)というワクワク感は、ウチでしか味わえない
この「感情的な理由」を言語化し、あらゆる採用ツールで一貫して発信し続ける。それがブランディングです。

 

法則3:【候補者体験(CX)】応募から内定まで、「4P」で候補者を“ファン”にする一貫したコミュニケーション

最後の法則は、候補者体験(Candidate Experience)です。
どんなに立派な「4P」をサイトに書いても、実際の体験が伴わなければ意味がありません。

「People(人の魅力)」を謳うなら、面接官の態度は温かいか?
「Purpose(志)」を語るなら、面接で社長の口から熱いビジョンが語られているか?
「Profession(成長)」を約束するなら、選考プロセスで誠実なフィードバックがあるか?

応募のメール返信一つ、面接での一言一句。そのすべてが「候補者体験」であり、候補者を“ファン”にする最大のチャンスなのです。

 

もう「何を書けばいいか」で悩まない。“4Pが伝わる”採用案内 3ステップ

「理屈は分かった。でも、具体的にどうすれば?」
大丈夫です。明日からできる具体的な3ステップをお伝えします。私たちも、伴走支援の現場で必ずここから始めます。 

STEP1:「自社の4P」を棚卸し、「伝えるべき強み」を定義する

まずは、あなたの会社の「4P」をすべて書き出してみましょう。
経営陣だけでなく、ぜひ現場で晴れやかに働いている社員にもヒアリングしてみてください。

あなたがたが「当たり前」と思っていることこそ、他社にはない“強み”の原石です。  

 STEP2:「仕事内容」を「働くリアリティ(自分ごと化)」に変換する

次に、その魅力を「物語」に変換します。
無機質な「仕事内容」を、候補者が「ここで働く自分」を想像できる「働くリアリティ」に変えるのです。

・NG例:「営業サポート(資料作成、データ入力)」
・OK例:「“ありがとう”を一番多く集める、営業チームの司令塔。あなたの作る資料が、商談の成否を分ける“武器”になります」

どうでしょう?後者の方が、やりがい(Profession)貢献実感(Purpose)が伝わりませんか

 STEP3:どの採用メディアで、どの「P」を伝えるか?(戦略的採用活動)

最後に、棚卸しした「P」を、最適な場所で発信します。
すべてを一つの求人票に詰め込むのはNG。戦略的に使い分けましょう。

このように「このメディアでは、このPを伝える!」と決めて一貫性を出すことが、戦略的な採用活動です。

まとめ:中小企業の採用ブランディングは「採用の4P」を磨き上げる経営戦略である

「欲しい人材が集まらない」という悩みは、条件(Privilege)だけで戦おうとするから生まれます。

中小企業の採用は、足し算ではなく、掛け算です。

あなたの会社にしかない「Purpose(志)」「Profession(仕事)」「People(人)」

これらを「Privilege(待遇)」と掛け合わせ、戦略的に磨き上げ、届けるべき人に届ける。

それこそが、中小企業の採用ブランディングであり、未来の事業を創る「経営戦略」そのものです。

この記事を読んで、「ウチにも光るPがあるかも」と少しでも感じていただけたなら、まずは小さな一歩を踏み出してみませんか?

【明日からできるアクションリスト】
まず、自社の「採用の4P」を紙に書き出してみる。
一番輝いている(活躍している)社員に、「なぜウチで働いているのか?」を4Pの視点でヒアリングしてみる。
今の求人票が「Privilege(条件)」だけの記載になっていないか確認し、OK例を参考に「Profession(仕事のやりがい)」を一文書き加えてみる。
 
あなたの会社の「晴れやか」な魅力が、未来の仲間へ届く日を心から願っています。
私たちHaReエージェンシーは、経営者の隣で汗をかき、その実現まで“しゃかりき”に伴走します。
 

「自社の“4P”が何か、客観的に分析してほしい」

「採用戦略の設計から、泥臭い実行まで伴走してほしい」

「机上の空論ではない、血の通った採用活動で会社を変えたい」

HaReエージェンシーは、「採用」を起点に「事業」を伸ばす戦略人事のプロフェッショナル集団です。

経営と連動した「人材戦略」の設計から、候補者の心を動かす「採用実行」の伴走、そして採用した人材が「戦力」となるまでの仕組み化まで、一気通貫でご支援します。

少しでもご興味をお持ちいただけた経営者・人事担当者の方は、まずはお気軽に「壁打ち」からご相談ください。

「ウチの採用ミスマッチ、根本から解決したい」

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「机上の空論ではない、現場で使える採用の仕組みが知りたい」

 

もし本気でそうお考えなら、一度、私たちHaReエージェンシーに相談してみませんか?

経営者の「伴走者」として、貴社の事業課題を採用の側面から解決します。

まずは、お気軽にお問い合わせください。

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