採用ノウハウ

スタートアップが「年収の壁」に打ち勝つための戦略的クロージング術

「最終面接まで手応えはバッチリだったのに…」
「最後は、大手企業の提示年収に負けてしまった…」

採用担当として、あと一歩のところで優秀な候補者にそっぽを向かれてしまった経験、ありませんか?胸が張り裂けるような、悔しい想いをしますよね。

「やっぱり、うちみたいなスタートアップじゃ、勝負するのは無理なのか…」

もし、あなたがそう感じているなら、この記事はあなたのためのものです。

結論から言います。年収で負けても、採用で勝つことはできます。

この記事を読めば、なぜ優秀な人材が”最後の最後で”あなたを選ばないのか、その根本原因がわかります。そして、情熱やビジョンを語るだけではない、データと対話で候補者の心を射抜く【戦略的クロージング術】を、明日から実践できるレベルで持ち帰ることができます。

まず、弊社がこれまで採用を伴走支援してきた中で、確信していることがあります。
それは、「年収で負けた」は、思考停止の言い訳である、ということです。

もちろん、年収は大事な要素です。しかし、特に優秀で引く手あまたな人材ほど、転職の軸を「金額」だけで決めることはありません。彼らが見ているのは、その金額の裏にある「自分の将来」です。

もしかして、候補者から「希望年収は1,000万円です」と聞いた時、「OK、じゃあ1,000万出せるか?」という、単純な足し算・引き算で考えていませんか?

候補者の希望年収は、氷山の一角にすぎません。その水面下には、彼らが生きてきた人生、これから実現したい夢、守りたい家族との生活など、無数の文脈が隠されています。あなたの会社が提示できる「お金以外の報酬」とは、この水面下の部分に深く、鋭く突き刺さる「価値」のことなのです。

では、どうすればその「お金以外の価値」を見つけられるのか。
答えはシンプル。候補者の選社軸を、表面的なレベルから人生レベルまで、に深掘りすることです。

採用クロージングでは、候補者のインサイトを掴まずして、心を動かすことはできません。

「今後のキャリアプランは?」といったありきたりな質問だけでは、候補者の本音にはたどり着けない。私が必ず聞くのは、もっとパーソナルな領域です。

  • 「今回の転職で、ご家族は何と仰っていますか?」

  • 「5年後、どんな生活をしていたいですか?その時、隣にいるのは誰ですか?」

  • 「あなたが仕事を通じて、世の中に『これだけは残したい』と思うものは何ですか?」

一見、業務と関係ないように思えるかもしれません。しかし、こうした対話を通じて初めて、その人の「人生の航路図」が見えてくる。その航路図に、自社の船がどう合流し、目的地までより速く、よりワクワクする航海を共にできるか。それを示すことが、クロージングのコアです。

あなたの会社で働くこと自体が、候補者にとって「最高の自己投資」だと確信させることができれば、採用の主導権はあなたが握れます。

選社軸を深く理解したら、次はいよいよクロージングです。

ここで、多くの企業が陥る最大の罠があります。それは、クロージングを「説得」の場だと勘違いしてしまうこと。
もしかして、「お願いします、うちに来てください!」と、最後は情熱や想いを伝えて頭を下げていませんか?

そのスタンスは、もうやめにしましょう。
採用クロージングとは、候補者の人生と会社の未来を交換する、対等なプロの「交渉」の場なのです。候補者は「口説き落とす」対象ではなく、未来を共に創る「パートナー」です。

「戦略的な交渉」の最高の事例が、あの大谷翔平選手がメジャーリーグではなく、日本ハムファイターズに入団した時の話です。

当時、誰もが彼のメジャー行きを確信していました。しかし、栗山監督(当時)は、膨大な資料を用意して彼を口説き落とします。その資料に書かれていたのは、目先の契約金の話ではありません。

「君の夢(世界一の選手になること)への最短ルートは、メジャーではなく、ここ日ハムにある」

そのことを、過去のデータ、育成プログラム、二刀流の可能性など、客観的な事実を積み上げて論理的に証明したのです。これはまさに【戦略的クロージング術】の神髄。

あなたの会社の魅力を、ただ並べ立てるだけでは意味がない。それらの魅力が、目の前の候補者“個人”の成功物語にとって、なぜ不可欠なパーツなのか。その文脈をデータで示し、未来をありありと想像させること。これが、年収の壁を超える唯一の方法です。

では、具体的にオファー面談をどう「戦略的」に変えていくか。
明日から使える3つのステップをご紹介します。

Step1:【準備】オファー資料に必ず盛り込むべき「5つの未来予測データ」
ただの条件通知書(オファーレター)で終わらせない。候補者の心を動かす「プレゼン資料」を用意してください。最低限、この5つは盛り込みましょう。

    1. 市場価値の成長曲線:
      候補者の現在のスキルセットと、3年後弊社で得られる経験を掛け合わせ、市場価値(想定年収)がどう推移するか。

    2. 具体的なキャリアパス事例:
      同じような職種で入社した先輩が、どう成長し、どんな役職・給与になっているかの実例。

    3. 事業の成長計画と本人の役割:
      会社の3ヶ年計画を具体的に示し、その中で候補者が担うミッションの重要性を伝える。組織図に候補者を組み込み話をする。

    4. 競合他社との提供価値比較:
      給与だけでなく「得られる経験」「裁量権」「働きがい」など、自社が勝っているポイントを客観的に示す。

    5. 経営陣からのパーソナルメッセージ:
      なぜ「あなた」が必要なのかを、経営者の言葉で具体的に伝える。

では、具体的にオファー面談をどう「戦略的」に変えていくか。
明日から使える3つのステップをご紹介します。

Step2:【実践】オファー面談を「プレゼンの場」に変える最強トークスクリプト
面談の場では、用意した資料を使い、一方的な説明ではなく対話形式のプレゼンを行います。

「本日は、〇〇(候補者名)さんのキャリアにとって、なぜ今、私たちがベストな選択肢なのかをご説明させてください。まず、私たちが〇〇さんのどこに最も魅力を感じ、どんな未来を期待しているかというと…(資料を提示しながら)」

「そして、これは私たちの事業計画ですが、この中核を担う〇〇というポジションでご活躍いただくことで、3年後には市場でこれだけの価値を持つ人材になれると確信しています。その根拠は…」

このように、主語を「会社」ではなく「あなたの未来」に置いて語ることが重要です。

Step3:【確信】候補者体験を最大化し、「この会社しかない」と思わせる最後の一押し
プレゼンが終わったら、最後は再び対話に戻ります。

「ここまでが、私たちが〇〇さんと共に描きたい未来です。この未来に対して、何か懸念点や疑問点はありますか?どんな小さなことでも構いません」

ここで出てきた不安要素を一つひとつ丁寧に解消し、最後はシンプルに、しかし力強く伝えるのです。

「私たちは、〇〇さんが最高のキャリアを築くための最高の舞台を用意する覚悟があります。一緒に、この未来を実現しませんか」

論理で納得させ、最後は感情で心を掴む。これが、候補者に「この会社しかない」と思わせる最後の一押しです。

いかがでしたでしょうか。

採用がうまくいかない原因を「年収の壁」のせいにするのは、もう終わりにしましょう。
必要なのは、資金力ではなく、候補者一人ひとりの人生にどこまで本気で向き合えるか、という覚悟です。その覚悟を、論理とデータで形にする技術こそが【戦略的クロージング術】です。

さあ、明日からこのアクションを始めてみてください。

【明日からできるアクションリスト】

☑︎ 「年収で負けた」と社内で言うのをやめる。
☑︎ 次の面接で、候補者の「家族」について質問してみる。
☑︎ 採用候補者一人に対して、A4一枚でいいので「その人だけの魅力と期待」を書き出してみる。

あなたが採用するのは、ただの労働力ではありません。会社の未来を共に創る、かけがえのないパートナーです。

この記事が、あなたの会社にとって最高の仲間集めの一助となれば、これほど嬉しいことはありません。あなたの会社の未来と、そこで働く人の表情。その両方が、「晴れやか」になることを心から願っています。

もし、あなたの会社だけの「戦略」を、私たちと一緒にしゃかりきになって考えたいと思っていただけたら。

まずは30分、壁打ち相手として気軽にお声がけください。

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