
スタートアップの立ち上げ初期メンバーは、「優秀な人しかいない」ように見える独特の生態系が広がっています。創業者が学生時代や会社員時代の仲間をリファラルで呼び寄せ、正社員化し、社内の主力を占める――そんな光景は珍しくありません。

主に身内で回すパターンが多い
内側にいる彼らは二十歳そこそこでも圧倒的にスキルが高く、一人で事業やプロジェクトを回せるほどの即戦力。なんてことも多いです。結果として「人間力で採用が回る」「社内のほうがずっとハイレベル」という自己強化サイクルが完成し、外部人材が入り込む余地はどんどん狭まっていきます。リファラルはタイミング任せなので計画採用には向かず、気がつけば“たまたま同じコミュニティにいた若者”だけで組織が固まってしまう――この構造は悪くははいのですが、組織を拡大しようとした瞬間に色んな課題が降りかかります。
では外部から即戦力を取ろうとした瞬間に何が起きるのか。まず「人材要件を固める」という行為そのものが壁になります。スタートアップの現場は未知数のタスクが同時多発するため、要件を細かく書き出すと際限なくハードルが上がり、結局は「大企業で事業開発をゴリゴリ回してきた人を年収低めで採用したい。。。」などという無理難題に行き着きます。

人材要件が市場とマッチしない
しかも社内の平均年齢が二十代半ばなのに、採りたいターゲットは三十代後半のベテランなど、年齢差がもたらすカルチャーギャップまで重なり場合もあります。若手中心の小さな船に経験豊富なクルーを乗せるのは理論上魅力的でも、現実には“馴染まなさ”という摩擦熱で船体がきしむのです。

スタートアップの求人票には落とし穴がたくさんある
さらに地雷は求人票の書き方にも潜んでいます。スタートアップは「社長が優秀」「面白い仕事をしている」という感覚的アピールには長けている一方、法律で示すべき労働条件や就業規則、報酬体系、昇給ロジックを言語化できていないケースが散見されます。応募者が知りたいのは勤務時間や休暇制度、入社後のポジション推移と年収レンジですが、そこが「給与応相談」「制度はこれから整備」という曖昧ワードで埋め尽くされると、 例えば、“婚活パーティーで高望みするわりに自己開示が薄い人”のような印象を与えます。結果としてギャップが拡大し、自分ごと化できないまま去ってしまいます。
制度が未整備でも内部リファラルが回っているうちは気づきにくいのですが、外部人材の採用を始めると「大手を辞めてまで来るメリットが本当にあるのか?」という問いが突き刺さります。三十代で家族を抱えた候補者にとって、年収が下がり、働き方もハードで、社内手当も薄い環境へ飛び込むのは修羅の道です。「SOがあればいいがほぼない」「次の資金調達で年収を上げる計画」といった期待値勝負の口説き方が通じない場合、採用はすぐ行き詰まります。
ここで施策として持ち出されるのが業務委託・副業ルートです。外部のプロを巻き込み、まずは一緒に小さなプロジェクトを走らせて相性を見る――この方式ならカルチャーフィットと実力を同時に観察できます。ただしこの成功体験が増えすぎると「フルタイム正社員はいなくてもなんとかなる」という錯覚に陥り、長期的な組織基盤が育ちにくいという別の落とし穴が開きます。
そして、求人票は「大手企業レベルの作り込みがないと勝てない」という現実を直視すべきです。サイトに制度・内容・実績を網羅し、SNSで現場の声を発信し、ダイレクトリクルーティングで継続的に接点を持ちながら“口説き切れる待遇”を提示する。この布石を敷かずに「優秀な人材は市場にいない」と嘆くのは、武器を置いて戦場に向かうのと同じです。スタートアップこそ求人票を徹底的に磨き込み、カルチャーと待遇の両面で“ちゃんとしている感”を伝える――それが地雷原を安全に歩き切る最短ルートなのです。
ではうまくいかない求人と採用ができる求人は何が違うのか?
ダメな求人の例
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“何でも屋”オープンポジション
「ご経歴に合わせ、マッチするポジションにて選考を進めさせていただきます」 ― 募集業務が営業・CS・マーケなど広すぎる求人
職務範囲も評価軸も会社側が決め放題。入社後に「まずは全部やって」と言われがち。 -
必須スキル“全部盛り” × 報酬アンマッチ
「新規事業立ち上げ/財務モデリング/交渉/英語ビジネスレベル…予定年収数百万円」例えば500万台で“最優秀層”の能力を要求。など市場とのギャップが大きすぎる。 -
労働条件がぼんやり
「詳細は面談時にお伝えします」 という表記を許容する求人が大量に存在(Indeed検索結果 2,800件超) 厚労省も「全条件は面接前までに明示が原則」と注意喚起しています。就業時間・残業代・勤務地などの核心情報を後出しにされると、比較検討ができない。ミスマッチの温床。
いい求人の例
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キャリアパスを数字で公開
「入社時 ◯◯万 → 半年後、想定 ◯◯万」 と昇給カーブやモデル年収を詳細に掲載。成長ストーリーを具体的に描けるので、候補者が年収と役割を握ったまま入社できる。 -
社内のドキュメントを丸ごとオープン
Notionで選考フロー・評価基準・業務フローを外部公開をするなど。 候補者は「どんな1日を送るか」までイメージできる。入社後のカルチャーギャップが小さくなります。 -
代表といつでも話せる導線
代表のX(Twitter)にTimeRexの30分面談リンクを固定ツイートし導線を持つ。応募前の疑問を直接ぶつけられるので、温度感が高い人だけ選考に進み、歩留まりが上がります。
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