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一人社長から抜け出す ── 売上3億までの、採用と組織のつくり方

2026年8月29日(土)
コラム
  • #仕組み化
  • #従業員規模50名以下
  • #採用体制構築
  • #採用戦略策定
「一人社長から抜け出す ── 売上3億までの、採用と組織のつくり方」ホワイトペーパーの表紙

「右腕がいない」「自分の分身が欲しい」。売上1〜3億の規模の経営者から、私がいちばん多く聞く言葉です。ただ、掘っていくと、足りていないのは人ではないことがほとんどでした。この記事では、その正体と、そこから抜け出すための打ち手を整理します。

商談も、採用面接も、最後は自分が出ないと決まらない

事業は伸びている。ただ、伸ばしているのが自分ひとりになっている。

売上1〜3億の規模の会社で、私がいちばん多く聞くのがこの状態です。

商談も採用面接も、最後は自分が出ないと決まらない。任せたはずの仕事が、気づくと自分のところへ戻ってきている。「自分がやったほうが早い」と思って、実際にやってしまう。人は増えたけれど、自社を第一に考えてくれる人が集まらない。営業を組織でやりたいのに、属人的なままになっている。

こうしたご相談を受けるとき、経営者の方は決まって「右腕がいない」「自分の分身が欲しい」とおっしゃいます。

ただ、掘っていくと、足りていないのは人ではないことがほとんどです。

「右腕がいない」は、採用の問題ではない

人を雇う。人に期待をかける。この二つが、最初の足かせになります。

期待した成果が出ない。思ったように動かない。ときには連絡が取れなくなる。そうした経験が重なると、「自分でやったほうが早い」に戻ってしまいます。そして一度戻ると、次に任せるハードルはさらに上がります。

ここで起きているのは、多くの場合「人選の失敗」ではありません。

ひとつは、役割が定義されていないこと。どこまでの業務を、どう切り分けて渡すのかが決まっていない。そのまま渡すと、受け取った側は「どこまで自分で決めていいのか」が分からず、都度確認が必要になります。結果、社長の手間は減りません。

もうひとつは、スピード感のギャップです。経営者のスピード感は非常に速く、渡した直後から結果を求めてしまいます。しかし入ったばかりの人が、そのスピードにいきなり合わせることはできません。ここを埋めずに評価すると、「動かない人」に見えてしまいます。

つまり、渡し方の設計がないまま渡している。「右腕がいない」は採用の問題に見えて、実は渡す側の設計の問題であることが多いのです。

まず、事業計画から必要な人数を出す

では何から手をつけるか。私は必ず、売上の分解から入ります。

売上目標は、単価と客数に分かれます。客数は受注数から、受注数は商談数から、商談数は面談数から、面談数はリード数から生まれます。各段階に歩留まりを置くと、目標売上に必要なリード数と商談数、そしてそれを担う活動量が数字で出ます。

ここまで分解すると、「右腕が欲しい」という言葉が「営業があと2名必要」という具体に翻訳されます。

そのうえで、組織図を描きます。

創業期・拡大期の会社は、組織図をつくらないことがほとんどです。人数が少なく、必要性を感じないからです。しかし順序が逆で、理想のあるべき姿を含めた組織図を先に描くと、そこに空いている箱が「足りない人材」として見えてきます。

最初は、社長がすべての本部長を兼ねていて構いません。箱を描き、そこにどういう人材が必要かを埋めていく。これが、事業成長に紐づいた採用につながります。

打ち手は、大きく2つに分かれる

必要な人数が出たあと、成長企業の打ち手は大きく2つに分かれます。ここが、この規模でいちばん重要な分岐です。

A|正社員ブースト型は、事業計画から逆算し、職種によっては年間10〜20名規模の正社員採用計画を引いて一気に張る形です。前提になるのは、「この人が売上を作る」という確証と、先に固定費を張れる原資があること。リスクは、見極めを尽くしても一定の離脱は出ること。それを許容してスピードを取る戦略です。営業などで一気に売上を伸ばしにいくフェーズに向きます。

B|業務委託プール型は、業務委託で幅広く受け入れて人材プールを作り、見極めながら正社員へ転換していく形です。一緒に働いて見極めてから決めたい、石橋を叩いて渡る成長の作り方です。リスクは、立ち上がりが緩やかなこと。そして正社員登用の基準を決めておかないと、優秀な人を他社に取られること。組織を作って安定して回していくところに人を張るビジネスに向きます。

どちらが優れているということはありません。条件によって、正解が変わります。

判断軸は3つ

では何で決めるか。判断軸は3つです。

① 調達資金の有無。先に固定費を張れる原資があるか。調達済みで十分なキャッシュがあるならA、まだ張れない・慎重に張りたいならBです。

② ビジネスモデル上の人材の置き場所。人を入れて何をするのか。人を入れて売上を立てにいくならA、事業を安定して回すために人を置くならBです。

③ 職種。売上直結か、機能か。営業など売上直結職ならA、オペレーション・専門機能ならBです。

3つのうち2つ以上が該当した側が、いまの自社の打ち手になります。

ここで大事なのは、①②③はいずれも採用の話ではなく、事業戦略の話だということです。ここが接続していないまま打ち手だけを議論しても、決まりません。「正社員を採るべきか、業務委託でいくべきか」という問いは、実は事業をどう伸ばすかという問いなのです。

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業務委託と正社員では、採用の難易度もコストも違う

「少しずつ正社員を採っていきたい」。その一歩目で、多くの会社がつまずきます。

業務委託の採用と正社員の採用は、難易度もやり方も、そして採用コストの構造もまったく違うからです。正社員採用のほうが、コストは大幅に高くなります。

そのため、人材の採用は投資であると捉え直さないと、正社員採用は前に進みません。どこにいくら投じるかを決める前に、「この採用は何を回収する投資なのか」を先に置く必要があります。

計算してみると、意外と手触りが出ます。たとえば投資額(採用費+立ち上げコスト)を150万円、その人が生む年間売上を3,000万円、粗利率30%とすると、月の粗利は75万円。年収480万円に法定福利費15%を足した月の人件費が46万円なので、月次のリターンは29万円です。150万円を29万円で割ると、回収はおよそ5.2ヶ月。

もちろんこれはモデルケースで、自社の粗利率や単価で置き換える必要があります。それに立ち上がり期間中は貢献が薄いので、実際の回収はもう少し先になります。だからこそ、入社後の立ち上げの設計が、回収期間そのものを縮めます。

業務委託とのリレーションが、正社員化の入口になる

B型を選ぶ会社からよく聞かれるのが、業務委託の方々とのリレーションの作り方です。

ここがうまくできている会社は、非常に強い。一緒に働きながら関係性をつくり、コミット度合いを段階的に上げていき、最終的に自社の社員になっていただく。スポット業務から始まり、継続稼働になり、ある領域の役割を持ってもらい、正社員登用に至る。この流れが順繰りに回っている会社は、採用市場で競わずに、確度の高い人材を迎え続けられます。

逆に、この設計がないと何が起きるか。一緒に働いて力量も相性も確かめられた人が、他社に正社員として迎えられていきます。見極めが済んでいる人を手放すことになるので、損失としては最も大きい部類です。

だからこそ、正社員登用の基準を先に決めておくことが効きます。

待遇で戦えなくても、魅力は4つの方向から作れる

採用の入口は、媒体でも求人票でもありません。「自社の何が魅力なのか」の言語化です。

ここが曖昧なまま募集をかけると、来た人と自社の間にズレが生まれ、入社後のミスマッチ、つまり早期離職として跡ね返ってきます。

この規模の会社は、給与や制度で大手と競うことができません。だからこそ、4つの方向から魅力を洗い出します。

目標の魅力(成長性・事業規模/企業理念・事業ビジョン)、組織の魅力(裁量権の大きさ・風通し/経営者と社員の魅力)、活動の魅力(ビジネスモデルの優位性/やりがい・身につくスキル)、そして待遇の魅力(勤務地・オフィス環境/給与水準・社内制度)。

待遇の魅力が弱くても、他の3つで語れる会社は採れます。逆に、4つとも言語化できていない会社は、何を出しても響きません。

採用は、月数万円から始められる

この規模の会社が採用に踏み出せない最大の理由は、コストです。しかし実際には、月数万円の規模から始められます。

業務委託の採用に有効な媒体、たとえばIndeedの有料広告、Wantedly、YOUTRUSTなどは、1媒体あたり月5万円程度から運用できます。そしてこれらの媒体は業務委託だけのものではありません。正社員採用にも使えます。

大切なのは、金額の大小ではなく、運用することです。出稿して終わりにせず、応募の数と質を見ながら調整を続ければ、母集団はつくれます。

まず1媒体を月数万円で始める。応募数と有効応募の比率を毎週見る。反応のある媒体へ配分を寄せ、チャネルを2〜3へ広げる。ポジションごとに媒体を出し分ける。この順序で十分に立ち上がります。

なお、選考そのものは、代表が前に出て熱量を持って進めれば、一定のところまでは叶います。この規模の会社の強みは、経営者本人が候補者と直接向き合えることだからです。

分かれ目は、正社員採用に入ってからです。業務委託と違い、候補者は他社と比較し、市場相場の中で意思決定します。ここで問われるのが、給与条件の出し方と伝え方です。オファー面談は「条件を伝える場」ではなく、「一緒に働く理由を確かめ合う場」です。ここを設計しているかどうかで、承諾率は大きく変わります。

最初の1ヶ月は、こちらが引っ張る

人が入ったあとの話をします。冒頭の「渡し方の設計」に戻ります。

入っていただいた方がすぐに走れないのは、当然です。必要なのは、立ち上がりを期間として設計しておくことです。

最初の1ヶ月は、オンボーディングの期間と割り切る。このとき最も大事なのは情報です。渡すべき情報を整理し、出し切る。そのうえで理解していただき、噛み砕いていただく期間として1ヶ月を置きます。

2ヶ月目は移行期です。一部を本人に渡し、本人が作ったものをこちらが事前に確認する。3ヶ月目からは運用期で、本人が引っ張り、こちらは抜き取りで確認します。

関わり方も段階的に変えていきます。手順まで一緒に決める「指示」から、進め方を一緒に考える「指導」へ。進め方は任せて後押しする「支援」へ。そして目標だけを渡す「委任」へ。相手のその業務における習熟度に応じて、関わり方を移していきます。

ひとつだけ、必ず守っていることがあります。関わり方を移すときは、必ず宣言することです。黙って関与を減らすと「放任」に見え、黙って増やすと「不信」に見えてしまうからです。

半年立ち上がれば、簡単には辞めない

最初の半年をしっかり立ち上げられれば、活躍までの時間は大きく短縮されます。そして、この段階まで来た方は、簡単には辞めません。

理由はシンプルで、この規模の会社に入る人は、給与や制度で選んでいるのではなく、経営者の思いに共感して入ってきているからです。

だからこそ、入口での魅力の伝え方が効いてきます。最初に伝えた魅力と、入社後の実態にズレがなければ、離脱は起きにくい。逆に、入口で盛って伝えた分だけ、あとでズレとして返ってきます。

採用と定着は、別々のテーマではありません。入口の言語化が、出口の定着を決めているのです。

まとめ ── 一人社長から抜け出すために

整理します。

まず、事業計画から必要な人数を出し、理想の組織図を先に描く。次に、A(正社員ブースト型)とB(業務委託プール型)のどちらで行くかを、3つの判断軸で決める。自社の魅力を4つの方向から言語化し、月数万円の媒体運用から母集団をつくる。オファー面談を設計して承諾を取り、入社後は3ヶ月かけて関わり方を移していく。

ここまでが、一人社長から抜け出すための一連の流れです。

そして、ここまで立ち上がると、次に出てくるのは「評価はどうなっているのか」という問いです。等級や評価の基準がないまま人が増えると、処遇の説明がつかなくなり、せっかく育った人から順に迷いはじめます。そこから先は、評価制度の設計と組織開発のテーマに移っていきます。それは、次のフェーズの話です。


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執筆者プロフィール

飯澤 祥平

Hareエージェンシー

代表取締役 CEO 飯澤 祥平

・お笑い芸人としてキャリアをスタートし
「人を笑顔にする」舞台経験を経て人材業界へ
・複数社で人事責任者を歴任後、独立系コンサル「HaReエージェンシー」創業
・ハイブリッド型採用支援「H.A.R.E」×DXで採用~定着を一気通貫支援

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