採用担当が忙しいのに採用が進まない理由|「戦略」と「日程調整」を分ける業務整理
「採用担当は毎日遅くまで働いている。なのに、なぜか採用が進まない」。そんな場面に心当たりはありませんか?
担当者がサボっているわけではありません。むしろ社内の誰よりも手を動かしている。それでも成果につながらないとき、原因は本人の能力ではなく、仕事の”混ざり方”にあることがほとんどです。
この記事では、採用・人事の仕事を「緊急度×重要度」で整理し直す方法と、私たちが現場で使っている「戦略・実装・実行」の3段階の考え方をお伝えします。どこを型にして手放し、どこに時間を残すのか。採用担当の忙しさを、成果につながる忙しさに変えるためのヒントとしてお読みください。
この記事でわかること
- 採用担当が忙しいのに、採用が進まない理由
- 採用・人事の仕事を「緊急度×重要度」で整理する方法
- 戦略・実装・実行の3段階で業務を組み直す考え方
- 仕事を渡すポイントと、AIを使った効率化の始め方
- 空いた時間を注ぐべき「緊急でない重要なこと」
目次
採用が止まる会社では、担当者の時間が「小さな緊急」に消えている
私たちは事業会社の人事として、また採用支援の立場として、さまざまな会社の採用現場に関わってきました。そこで毎回感じるのは、採用人事には驚くほど細かい仕事が多い、ということです。
ある採用担当の1日を書き出してみると、たとえばこうなります。
- 面接に同席する
- 候補者と面接官の日程を調整する
- 候補者へ合否や次回の案内を連絡する
- 人材紹介会社へ選考状況を共有する
- スカウトを少しずつ打つ
- 届いた履歴書に目を通す
- 履歴書を印刷して部門長に手渡す
どれも「今日やらないと誰かが困る」仕事です。返信が1日遅れれば、候補者は他社に流れるかもしれない。だから後回しにできません。
けれど、こうした仕事だけで1日が埋まっていくと、本来やるべきことに手が回らなくなっていきます。来期に、どんな人が何人必要なのか。なぜ応募が集まらないのか。そうした問いを考える時間が、気づけばゼロになっている。採用が「止まる」のは、たいていこの状態が数か月続いたあとです。
もしかして、「書類を見る人」と「日程を組む人」が同じ人ですか?
採用担当が1〜2名の会社では、選考の判断も、連絡や日程調整も、同じ人が担っているケースが少なくありません。
考える仕事と回す仕事が1人の中で混ざると、たいてい回す仕事が優先されます。回す仕事には締め切りがあり、考える仕事にはないからです。「今週こそ採用計画を見直す時間を取ろう」と決めても、月曜の朝に日程調整の依頼が5件届けば、その予定はあっさり消えてしまう。担当者の意志の問題ではなく、仕事の構造の問題なのです。
採用業務は「緊急か」「重要か」で分けて見る
では、どう整理すればよいのか。おすすめしたいのは、よく知られた「緊急度×重要度」のマトリクスに、採用・人事の仕事を当てはめてみることです。
| 緊急 | 緊急でない | |
|---|---|---|
| 重要 | 最終面接、内定条件の調整、辞退しそうな候補者へのフォロー | 経営計画からの人員計画、部門との対話、採用広報、仕組みづくり |
| 重要でない | 日程調整、履歴書の印刷・回付、定型の連絡 | 惰性で続けている報告資料の作成など |
緊急な仕事ほど、成果へのインパクトは意外と小さい
実際に書き出してみると、ほとんどの仕事が「緊急」の列に並びます。ところが、その一つひとつを成果へのインパクトで見直すと、思った以上に小さいものが多い。日程調整を完璧にこなしても、それだけで採用の質は上がりません。
人事にとって本当に効くのは、右上の「緊急でないけれど重要なこと」です。ここに手をつけない限り、採用はずっと目の前の対応の積み重ねで終わってしまいます。
人事の成果は、数年単位でしか見えてこない
もう一つ、人事の仕事には時間軸の特徴があります。
応募が増えた、採用が決まった。こうした成果は短期でも見えます。けれど、採用した人が入社して立ち上がり、活躍し、会社の利益に貢献するところまでたどり着くには、場合によっては数年かかります。

人事は本来、それだけ長い時間軸で動いている仕事です。にもかかわらず目の前の緊急な対応ばかりに追われていると、数年後の組織をつくる仕事が手つかずのまま残ります。業務がどこかで破綻する原因の一つは、この時間軸のずれにあると私たちは考えています。だからこそ、仕事をはっきり分けておく必要があります。
戦略・実装・実行の3段階で、業務を組み直す
分けたあとはどうするのか。私たちは人事・採用の業務を「戦略」「実装」「実行」の3段階で捉えています。

- 戦略:誰を、何人、いつまでに、なぜ採るのかを決める
- 実装:戦略を回すための業務を型にし、効率化してオペレーションとして組み立てる
- 実行:組み立てたオペレーションを、決めたとおりに回す
多くの会社では、戦略と実行はあっても、真ん中の「実装」が抜け落ちています。型がないから、担当者は毎回考えながら回すことになる。その結果、回す仕事が考える時間を食いつぶしていきます。
ここでいうオペレーションは、冷たい流れ作業のことではありません。候補者への連絡ひとつにも、会社の温度は表れます。温かみのあるオペレーションを型として組んでおくこと。それが実装の段階の役目です。
手を渡すのは「会うかどうかを決めたあと」
実装でまず決めたいのが、仕事の受け渡しポイントです。私たちが提案しているのは、書類を見て「この人に会うかどうか」を決めたところで渡す形です。

Before
部門長「この人、どう?」
採用担当「確認します。日程も私から候補者に聞いて、決まったらまたご連絡しますね」
(その後、候補者・部門長・採用担当の間でメールの往復が数日続く)
After
採用担当「書類を見て、面談に進めたい方です。会ってみませんか?」
部門長「会おう」
採用担当「では日程調整は担当に渡します」
(採用担当は、次の候補者の書類と部門との要件のすり合わせに戻る)
判断は社内の採用担当が持ち、決まったあとの日程調整や連絡は、別の担当者や外部、仕組みに任せる。この線を1本引くだけで、担当者の手元に考える時間が戻ってきます。
型にできる仕事は、AIも使って効率化する
いまはAIをはじめ、使える道具が大きく増えました。定型の連絡文、求人の投稿文の案、候補者情報の整理など、型にできる仕事はかなりの部分を効率化できます。
ただし、いきなりすべてを自動にする必要はありません。まずはAIに案を出させ、人が確認してから出す。範囲を限って試し、問題がなければ広げていく。投稿の量を一気に増やすと、応募が想定以上に集まって現場が回らなくなることもあります。入口を広げるときは、その先の選考で受け止められる量かどうかもセットで考えておくと安心です。
空いた時間を「緊急でない重要なこと」に使う
効率化で生まれた時間は、マトリクスの右上に注ぎます。人事にとっての「緊急でない重要なこと」とは、たとえばこんな仕事です。
- 経営計画・事業計画を読み、そこから組織や人員の計画を考える
- いまの人材のバランス(経験、スキル、役割の偏り)を見直す
- 新しい人事システムを導入するなど、仕組みそのものを整える
- 各部門と対話し、求める人物像や現場の課題をすり合わせる
- 仕事や部門の魅力を吸い出し、採用広報に展開する
どれも、今日やらなくても誰も困りません。だからこそ意識して時間を確保しないと、いつまでも手がつかない。逆に言えば、ここに時間を使えている人事は、半年後、1年後の採用の質に差が出やすくなります。
外に出すなら、最後は社内に戻ってくる形で
回す仕事を外部に任せるのも、もちろん有効な選択肢です。私たちも採用代行という形でお手伝いすることがあります。
ただ、私たちが目指しているのは、外に出しっぱなしにすることではありません。代行しながらAIで業務を効率化し、型ができたら社内の人事の方々にお戻しする。最終的には、自社の人事が戦略から実行までを回せる状態をつくることがゴールです。外部の力を借りるときも、「いずれ社内で回せる形になるか」を一つの判断基準にしてみてください。
まとめ:明日からできる5つのアクション
- 採用担当の1週間の仕事を、細かいものまで書き出す
- 書き出した仕事を、緊急度×重要度のマトリクスに置いてみる
- 「会うかどうかを決めたあと」など、仕事の受け渡しポイントを1つ決める
- 型にできる仕事を1つ選び、AIや外部の手を借りて試してみる
- 空いた時間で取り組む「緊急でない重要なこと」を1つ、先にカレンダーへ入れる
採用担当が忙しいのは、頑張っている証拠でもあります。その頑張りが数年後の組織にきちんとつながるように。まずは仕事を「分ける」ところから始めてみませんか。
採用担当が一人の会社で、どの仕事から手放すかは、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 採用担当が一人の会社は、何を手放すか|残す仕事と任せる仕事の分け方
採用の「集まらない・決まらない・残らない」を、一つのチームで。
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